武田コロイドテクノ・コンサルティング株式会社

第33回 球状高分子のDebye-Buecheモデルとコロイド分散系の粘度

以下のEinsteinの式で示されるように、コロイド粒子の分散系の粘度ηsは分散媒の液体の粘度ηより大きい。

(1)

ここで、φはコロイド粒子の体積分率である。(1)式は有名な式であるが、実は1906年に発表された最初の論文では計算に誤りがあり、(1)式のφの係数5/2が1であった。1911年にEinstein自身が誤りに気づき訂正したが、その間に間違った式を使って論文を書き、Einsteinの訂正を見て自分の論文の訂正を出した人もいた(桂井富之助著、コロイドの理論、川出書房、1951, 46頁)。


図1. Debye-Bueche理論による高分子のモデル

さて、前回のコラムで述べたように、Darcy理論を発展させたBrinkman理論とDebye-Bueche理論は同等であるが、前者が多孔質(ポーラス)の粒子を扱っているのに対して、後者は主に球状高分子を対象にしている。Debye-Bueche理論における高分子のモデルは、図1のように高分子のセグメント(数個のモノマーからなる球状の構造要素)を内部に一様に分布させた球である。各セグメントが高分子内を速度uで通過する流体にStokes抵抗を及ぼすと考える。半径αpのセグメントが密度Npで高分子内に分布する場合、単位体積当たり6πηαpNpuの力が流体に加わる。この力が前回コラム (1)式の-(η/k)uに対応するから、Brinkmanの遮蔽長は $1/λ =1/ \sqrt{6πα_pN_p}$になる。
DebyeとBuecheはこの高分子モデルに基づき高分子(半径α)分散系の粘度を計算し、(2)式を得た。

(2)

図2に(2)式の体積分率φの係数をλαの関数として与えた。λα > 102では固体粒子の場合の係数2.5にほぼ等しいことがわかる。


図2. 高分子分散系の粘度ηs ((2)式)における体積φの係数のλα依存



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