武田コロイドテクノ・コンサルティング株式会社

第35回 中性高分子層で覆われた球状粒子に対するHenry関数

第24回コラムで述べたように、電解質水溶液中(粘度η, 比誘電率εr)における球状粒子(半径α)の電気泳動移動度μは粒子のゼータ電位ζがあまり高くない場合(1:1電解質溶液中で50mV以下)、μ= ( εr εo ζ /η)f(κα)で与えられる。ここで、1/κはDebye長、εoは真空の誘電率、f(κα)はHenry関数である。コア半径αの球状固体粒子が厚さb-αの高分子層に覆われた場合(図1)、Brinkman-Debye-Buecheモデルを適用して得られるHenry関数f(κα)はκαのみでなく、λαおよびα/bに依存する極めて複雑な関数になる1)。図2-4に計算例を与えたが、Henry関数の表式については元論文1)を参照されたい。α/b= 1は裸の固体粒子に対するHenry関数である。図1のλ=∞の場合は、高分子層に電解質おイオンが浸透できるが、層内で液体の流動が無い場合で、すべり面の位置がコア表面から高分子層のへりまで移動した場合に対応する。図3と4では、高分子層内に電解質イオンが浸透し、かつ層内で液体の流動が起こる場合である。いずれも、固体粒子のHenry関数に比べ、大きく減少していることがわかる。


図1. 中性高分子層で覆われた球状粒子
α= コア半径, b =高分子層を含めた粒子半径,
b-α= 高分子層の厚さ



図2. 中性高分子層で覆われた球状粒子の
Henry関数 λ= ∞




図3. 中性高分子層で覆われた球状粒子の
Henry関数 λα= 100



図4. 中性高分子層で覆われた球状粒子の
Henry関数 λα= 10


文献 1) H. Ohshima, J. Colloid Interface Sc., 252, 119 (2002).



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